耳鼻咽喉科[4. のど(喉頭)の病気]
疾患一覧
- 急性喉頭蓋炎
- 声帯ポリープ・声帯結節・ポリープ様声帯
- 喉頭横隔膜症(先天性・後天性)
- 喉頭軟弱症
- 喉頭狭窄
- 喉頭外傷
- 喉頭異物
- 急性喉頭炎
- 急性声門下喉頭炎
- 急性喉頭気管・気管支炎
- 喉頭アレルギー
- 声帯溝症
- 喉頭肉芽腫
- 声帯嚢胞
- 喉頭痙攣
- 声帯麻痺・反回神経麻痺
- 声帯萎縮
- 核上性麻痺
- 外転麻痺
- 機能性音声障害
- 心因性発声障害
- 痙攣性発声障害
- 喉頭腫瘍
- 嚥下障害
急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)
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正常の喉頭蓋 | 急性喉頭蓋炎 |
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喉頭蓋(こうとうがい)は声門のすぐ上にあり、ものを飲み込む時に気管の中に入り込まないように蓋をする構造をしています。急性喉頭蓋炎は細菌感染によって喉頭蓋が急激に腫れるため、気道をふさいでしまい、ひどくなると呼吸困難や窒息を引き起こすこともある病気です。
初期症状はのどがイガイガする、発熱、のどの痛み、嚥下痛(飲み込む時にのどが痛む)などです。この時点では風邪との区別がつきにくいです。その後、流涎(のどが痛くて唾液が飲み込めず、口からよだれを流す)、ふくみ声(声がこもる、声が出しにくい)、喘鳴(息を吸う時にゼーゼーと音が鳴る)、などの症状が出現したらこの病気が強く疑われます。更に症状が悪化すると呼吸困難が出現し、最悪の場合窒息に至ることもあります。
治療は、軽症以外は窒息の恐れがあるため入院治療を行います。抗生剤やステロイドの点滴治療が奏功せず、短時間のうちに呼吸困難が起こることが予想される場合には気管切開術などの気道確保を行います。
声帯ポリープ・声帯結節・ポリープ様声帯
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声帯ポリープ |
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声帯結節 | ポリープ様声帯 |
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喉頭とは、のど仏のなかのことを言います。喉頭には声帯という、声を出す器官があります。二つの声帯が閉鎖して、肺から送られてきた空気によって声帯の粘膜が振動して声が出ます。この声帯が、なんらかの障害によって声が嗄れます。声が嗄れて、その声がなかなか元通りに治らない場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。ここでは声帯ポリープ、ポリープ様声帯、声帯結節を紹介します。
声帯ポリープは、声帯に炎症がある時に無理な発声をすることなどがきっかけとしてできます。
声帯結節は、歌手や教員、保育士、スポーツインストラクターといった、日常的に声を酷使する方に出来やすいです。声帯の両側に、左右対称に「ペンだこ」のように出来ます。
ポリープ様声帯は、喫煙が主な原因と考えられています。声帯の両方の粘膜が水膨れのような腫脹を生じます。声がれというよりは声が低くなります。症状がすすむと息苦しさも出てきます。
治療法としてはまず経過観察を行い、声の衛生指導や吸入などの保存的治療で改善が得られない場合には手術治療を考えます。手術は通常全身麻酔をかけた後に、顕微鏡を用いて経口的に声帯の手術を行います。手術時間は10~20分程度で、入院期間は3~7日間です。声を良くする手術のため、手術後は1週間発声禁止が必要です。
声帯麻痺(反回神経麻痺)
声帯を動かす筋肉を支配している神経が、なんらかの原因によって麻痺をきたし、声帯が動かなくなる病気です。反回神経麻痺は、肺がん(癌)、食道癌、甲状腺癌、などの病気が神経に直接広がって麻痺を生じたり、頸部、胸部の手術によって麻痺が生じることがあります。他にも挿管性麻痺や外傷、ウイルスによる麻痺、原因不明の特発性麻痺も少なくありません。
診断は喉頭ファイバーにて直接声帯の動きを観察します。片側性声帯麻痺は、反回神経が温存されていれば自然治癒が期待でき、また反対側の声帯がより強く動いて症状が軽減されることもあるため、発症後半年間は経過観察します。
治療の詳細については、声帯内注入術のページをご覧ください。
喉頭腫瘍
喉頭がん(癌)は頭頸部癌の中でも最も頻度の高い疾患であり、60歳以上に好発します。発生する部位により声門癌、声門上癌、声門下癌に分類されますが、声門癌が約65~70%と最も頻度が高いです。喫煙が最大の誘因とされ、声門上癌ではこれに加えて飲酒の関与が指摘されています。
症状は嗄声(かすれ声)や飲み込み時の痛み、頸部のリンパ節腫脹などがあります。
外来で喉頭癌が疑われた場合、まず確定診断のための組織検査を行う必要があります。全身麻酔下で生検を行いますので最低2泊3日の入院が必要となります。組織検査で診断が確定した後、それぞれの病期に合わせて治療を行っていきます。喉頭癌は治療選択がいくつかありますので、患者さんとご相談の上決定します。詳細は、喉頭癌のすこし専門的な話 の貢に記載がありますので、参考にしてください。
嚥下障害(えんげしょうがい)
食べ物や水分がうまく飲み込めなくなることを嚥下障害といいます。当院では嚥下障害に対して積極的に診断や訓練方法、代償嚥下指導を行っています。
脳梗塞、脳出血、神経の病気などによって食べることができなくなり、リハビリを行っても回復が難しい場合、手術によって飲み込みの機能(嚥下機能)を改善させることを検討します。代表的な手術方法は、喉頭挙上術と輪状咽頭筋切断術、声帯内方移動術です。
また、唾液すら気管に入ってしまい、繰り返し肺炎になってしまうために、食べることはもちろん話すことも出来ない患者さんに対して、誤嚥防止術を行っています。代表的な手術は喉頭気管分離術、声門閉鎖術です。この手術は、すでに気管切開を受けている患者さんが主に対象になります。人によっては手術によって気管カニューレ(プラスチックの筒)を外すことが出来ます。誤嚥の心配がなくなるため、再び食事が出来るようになる患者さんもいます。
嚥下障害に対する機能改善手術、誤嚥防止術は最近5年間で10例以上行っています。
気管切開孔を開けておきながら食事だけではなく、どうしても発声機能を残したいという希望がある方は、特殊な手術についても検討します。
また、飲み込むときに声門の閉鎖が悪く、むせやすい患者さん(声帯麻痺、あるいは声帯萎縮)に対しては、声帯内注入術という治療を行っています。